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翌朝。
「ふあぁ…」
いつもの坂を登りながら、粗野なアクビを一つ。
…結局昨日は、長門と相々傘なるものをして帰ったワケか。
まあ、別にそれ自体悪い気はしなかった。
口喧しいどこぞの団長とは違い、一緒にいても苦にならないしな。
ただ一つ、気に掛かることがあった。
「ハルヒが聞き及んでいなければいいのだが…」
この件がハルヒの耳に届けば、厄介なことになるのは自明だ。
まあ、ハルヒに関わろうとする奴なんて、宇宙人と未来人と超能力者以外皆無であろうから、
俺と長門が一緒に帰ってる所を見たとしても、何の利も無しにハルヒに話そうとする奴はいないだろう。
しかし、俺達を見た誰かが噂しているのをハルヒが偶然聞き入れる、なんてことは十分にあり得る。
おまけに、アイツのカンと洞察力は驚くほど鋭い。
うまく誤魔化せる言い訳を考えておいたほうがいいかもしれん、と思っていると、横から声がした。
「よう…」
谷口だ。
「どうした、珍しくトーンの低い挨拶だな」
「…フラれた…」
谷口が面白いセリフを言っている。
「ん?なんだって?」
「フラれたんだよ…俺、昨日言ってただろ?光陽院の子がどうって…」
そういや、そんなこと言ってた気がする。
「ああ」
「その子にな…付き合ってくださいって言ったら、2秒くらい間空けて『ごめんなさい』ってよ…」
2秒か。っていうか、
「お前…まさか、出会い頭ですぐ言ったのか?」
「ああ…」
「その子と話したことは?」
「ない…」
それじゃ普通に考えて成功率ほぼ皆無だろう。何故成功すると踏んだのだ、コイツは。
谷口の「鬱になりそうなストーカー話」を延々聞かされながら、学校についた。
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