第一章

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学校に着き、教室の後ろの入り口から教室を見渡した。 試験まであと3日とあって、俺と谷口が限りなく居づらい雰囲気が漂う教室で、一人、ノートで扇ぎながら頬杖をついて窓の外を眺めてるヤツがいた。ハルヒだ。 「いっつもああしてるけどよ、アイツ、UFOでも探してんのか?」 と谷口。 UFO…か。 懐かしい響きだ。俺も昔は健気に信じてたものだがね。 今となっては「宇宙人」と言えば、文芸部室の片隅でパイプイスに座って黙々と本を読む北高セーラー服姿の少女の様子が思い浮かぶ。 …まあいいとして、いくら時間にまだ余裕があるとはいえ、入り口で突っ立ってるのもどうかしてるしな。俺達はそれぞれの席に向かった。 「よう」 そういや、俺がハルヒにこうやって挨拶するようになったのっていつ頃からだっけ。まあどうでもいいんだが。 「…おはよ」 窓の外の虚空から視線を外さなかった。 俺は窓の方にもたれるようにして椅子に座った。 さて… 試験前ではあるが、こんな朝っぱらから勉強する気など起きるはずもない。 クラスメイト達は同級生ながら尊敬に値するね。 しかし俺と谷口のような例外も少々居て、そいつらは机に突っ伏しているか、岡部担任が来るのをノートか何かで扇ぎながら待っているかだった。俺が言うのも何だが、いずれもやはり成績不振組である。 その例外の中のまた例外がコイツなのだが、そこはまたコイツだからだと言えよう。 「…なによ、その目。何か言いたいことがあるなら言いなさいよ」 煩わしそうなのはいつものことだが、加えてなんとなく気怠そうだな。 「そりゃあ、あたしだって疲れぐらい感じるわよ。夏休みだってあたしのお陰で充実したものになったでしょ?こんなに部下想いの団長なんて、日本中探したって居たもんじゃないわよ。少しは感謝しなさいよね」 と早口で言い終えると、また気怠そうに窓の外に視線を戻した。 夏休みが充実していたかと言えば…まあそうだが、詰め込みすぎ感が否めないな。ハルヒ本人にとってはさぞかし充実していたことだろうね。やり残したことが1つあったってだけで8月17日から31日までを1万数千回と繰り返させたくらいだからな。 部下想い発言についてはあえて触れないでおこう。 俺が日本には「団長」という役職の人間がどのくらいいたものかと考えていると、颯爽と岡部担任が入ってきてホームルームが始まった。
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