第一章

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放課後。 部室に入ると、長門は団長席に座ってパソコンを見ていた。 「よう、長門」 「…」 一瞬、こちらに目を合わせる。それが長門流の挨拶だ。 「珍しいな、お前がパソコンいじってるなんて」 いじってる…というよりは、なにやらデスクトップの画面とにらめっこをしているように見える。無表情だが。 「…」 「…何、してるんだ?」 「…」 無言。画面から目線を外そうとしなかった。 「…長門?」 「…」 そんなに興味のそそられるものでもあったのかと、画面を覗こうとした時、 「…完了した」 と呟いて急に席を立ち、そのままいつものパイプイスに座って読書を開始した。 マウスを触ってるようにも見えなかったが、画面を見るとすでにシャットダウンされたらしく真っ暗だった。 「…なあ、長門」 「…何?」 「…何してたのか、聞いてもいいか?」 「……なんでもない……何もしていない……」 「…そ、そうか」 「そう」 「…」 「…」 …沈黙。 俺が定位置に戻って着席すると、ふとドアが開いた。 「暑いわねー。この暑さ、どうにかなんないのかしら」 どうにもならないことをぼやきながら入ってきたのはハルヒだった。 「…あれ?みくるちゃんは?」 荷物を置き、一通り部屋を見渡すと、俺に聞いてきた。 「…あー、朝比奈さんなら、友達の家で勉強会があるそうだから部活に来れないんだそうだ」 「…ふーん?」 これでも一応、午後の授業中に必死で考えたのだ。怪しまれないように寝たフリまでする徹底ぶりに我ながら感心だ。 「それ、いつどこで聞いたの?」 …さすがはハルヒだ。聞いてほしくないことを聞いてくるな。 「昼休みに教室まで来て報告してくれた。ハルヒがいないから代わりに俺にな」 「なんであたしが帰ってきたらすぐ言わなかったの?」 「部活のときでもいいと思ってな。すぐ言う必要もないだろう」 「ふーん…まあ、いいわ」 …ふう。誤魔化しきれたか? 「はあ…みくるちゃんが居ないとつまんないわね。今日は遊びたい気分だったのに」 助かりましたね、朝比奈さん。と心の中で呟く。 「キョン、お茶」 「はいはい」 渋ると何言われるか分からないしな。無駄に俺の精神を疲弊させるようなことはしないさ。 ついでに長門にもお茶を出した。 ハルヒはいかにもおいしくなさそうに茶を啜りながらパソコンを起動させ、メールが1通も来ていないのを確認した後、日課のネットサーフィンを始めた。
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