第一章

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ただ、時間が過ぎていった。 試験前なので、普通の部活は休止期間であるため、いつもの野球部の掛け声や吹奏楽部の金管楽器の音色は聞こえてこない。 パソコン本体の鈍い稼動音、ハルヒがマウスをクリックする音とキーボードを叩く音、長門が本のページをめくる音が文芸部室に響いていた。 何をするでもなくぼーっとする俺。仕方なく机に突っ伏していると、眠気を感じ、うとうとしていると、扉が開いた。 古泉だ。 暇つぶしができるかと思っていたら、入ってくる様子もなく、 「すみません。今日だけどうしても外せない用事ができてしまって。お先に失礼させていただきます」 と言って、扉を閉めてさっさと帰っていった。 「…おい、ハルヒ」 不服申し立てとばかりに、俺はハルヒに話しかけた。 「何?」 「いいのかよ?古泉帰っちまったぞ」 「外せない用事なら仕方ないんじゃない?あんただったら許さないけどね」 「…何故だ」 「古泉くんは副団長よ。それなりに信頼があるワケ。もちろん2日以上続けて来ないんだったら問題だけど、今日だけって言ってたじゃない。それに、平の団員がどうこう言える立場じゃないでしょ」 「…そうかい」 それ以上は何も言わなかったし、何も言われなかった。 時計が5時半をまわった。 「そろそろ帰るわ。キョン、鍵よろしくね」 そう言って鍵を俺に預け、荷物を持ち、出て行った。 …… 俺と長門だけが残された。 BGMは、本のページをめくる音のみとなった。 目が醒めた俺。ふと窓の外を見ると、朝の快晴ぶりが嘘のように曇っていて、今にも降り出しそうだ。 …と思ってたら降ってきた。 朝の快晴ぶりから、1日中晴れだろうと高を括っていたので、当然ながら傘はない。 どうしたものか。 …ま、そろそろ帰ってもいい頃合いだろう。 「長門、雨も降ってきたし、そろそろ帰るか?」 こちらを見る。首を縦に降る。肯定の意。 「鍵閉めるから、先に出てくれ」 荷物をまとめ、部室を後にする長門。そういや、長門は傘を持ってるのか、というか必要なのか? と思ったら、手に大人用と思しき傘を持っていた。天気予報をちゃんと見ていたのか、というか長門なら見ずとも予測できるのだろうがな。 職員室に鍵を返し、1年の昇降口へと向かう。 部活がないので、もうほとんどの生徒は下校済みなのだろう。校舎にまるで人影がない。 さて。 靴を履き替えつつ、ズブ濡れになる覚悟を決めた。
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