『第零幕~プロローグ~』

8/21
前へ
/179ページ
次へ
『――この太刀筋、青い大剣、疾風の如き速さ……まさか』     二十合程打ち合ってから、少年は何かに気付いたのか、一度身を退いた。   そして、叫ぶ。     「あ、あんなところにたい焼き屋が」   少年はデタラメな方向を指差した。     それを受けてか。 黒装束の動きが止まり、キョロキョロし始める。     「ど、何処だ。たい焼き屋は何処だぁぁ」     『女独特の高い声。 そして、たい焼き好き。――ビンゴだ』     少年は、動きを止めた黒装束に急接近して覆面を取る。     「――やはりエルスか、何してるんだ?」   少年は、半ば呆れ顔で黒装束に言った。   「…………ちぇ」   エルスと呼ばれた黒装束は、バレてしまったからか、ばつの悪そうな顔を浮かべ、大剣を地面に落とした。
/179ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1145人が本棚に入れています
本棚に追加