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「とぅあ!」
固い体を無理矢理バネにして、小高い丘を一気に越える。目標に近づくごとに、タイシの心は熱くなった。止まっているはずの心臓が、鼓動をあげているような気までしてくる。そんなタイシの頭に浮かぶのは、絵にも書けない華麗な技で、ジャンを打ち倒し、ロンを救う自分の姿。
「ふ、くくく……」
心に描いた勝利の図に、思わず笑みがもれてしまう。隠していたはずの幻気も、無意識のうちに膨れ始めた。それを感じとったのか、周囲の木々がざわめき始める。草むらを獣が走り去る音や、山鳥が鳴き声をあげながら飛び立つ音も聞こえだした……。
しかし、
「ふひひ…………」
自分の活躍を妄想するのに忙しいタイシの耳には、何の音も入ってこない。
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