プロローグ

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  それから数分もしない内に、タイシの周りから音を発するものはいなくなった。 タイシが大地を蹴る音だけが、山の中に響き続ける。タイシ自身は、まだそれらのことに気がついていなかった。   隠したつもりだが、溢れ出ている幻気。   強大な気を感じとれる動物や植物は、普通なら急いでその場から離れたり、それが過ぎ去るのを息を潜めて待ったりする。 しかし、中には自ら進んで「強者の気」の持ち主に近づくものもいた。それは、獣の中でも桁外れな力を持ってしまった、強者しか食すに値しないと考える個体。もしくは、強者と戦うことで、自分の力に磨きをかけようとする、超人、怪人、魔人。いずれも、常人には理解出来ない力を感じることの出来る、人を超えた存在だ。   タイシはまだ気づいていない。 自分の幻気がまったく隠せていないことにも、見知らぬ「気」の持ち主が、自分に近づいてきていることにすら…… だ。  
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