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その二つもあってだろうか。
「怪しいですね」
ロンはタイシのことを欠片も思い出さず、ただただ不愉快に思い、怪しんだ。
僅ながらだが、確かにタイシは幻気を持っている。幻気を持つのは幻獣と幻獣拳士だけ、幻獣拳士を作れるのはロンだけだ。記憶には残っていなくとも、タイシの存在はロンが生み出した以外にはありない。
……にもかかわらず、ロンはタイシを、過去に自分の暇潰しが生んだ結果を思い出そうともせず、理解不能な存在として、消してしまおうと考えた。
「ちょっと待てヨ」
タイシを消そうするロンを、サンヨが止めた。
彼はロンの部下であり、分身でもある幻獣拳士だ。ロンの持つ不死の力が、その身を離れ、一人の拳士して身体を得た存在である。
「何のつもりですか?」
「手下になりたいって言ってるんだから、してやったらいいヨ」
「私はこいつが気に入らないのです」
「なんでヨ?」
「嫌いなものに、一々理由が必要ですか?」
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