プロローグ

4/28
前へ
/160ページ
次へ
  その二つもあってだろうか。   「怪しいですね」   ロンはタイシのことを欠片も思い出さず、ただただ不愉快に思い、怪しんだ。   僅ながらだが、確かにタイシは幻気を持っている。幻気を持つのは幻獣と幻獣拳士だけ、幻獣拳士を作れるのはロンだけだ。記憶には残っていなくとも、タイシの存在はロンが生み出した以外にはありない。 ……にもかかわらず、ロンはタイシを、過去に自分の暇潰しが生んだ結果を思い出そうともせず、理解不能な存在として、消してしまおうと考えた。   「ちょっと待てヨ」   タイシを消そうするロンを、サンヨが止めた。 彼はロンの部下であり、分身でもある幻獣拳士だ。ロンの持つ不死の力が、その身を離れ、一人の拳士して身体を得た存在である。   「何のつもりですか?」 「手下になりたいって言ってるんだから、してやったらいいヨ」 「私はこいつが気に入らないのです」 「なんでヨ?」 「嫌いなものに、一々理由が必要ですか?」  
/160ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加