気分は太平洋

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私は参っていた。 長年のお気に入りである、卸したての靴に汚い汚泥をかけられたのでは、正男様に会う資格も無い。 私は傷心のまま祖国への帰路についた。 「なんだって?ビザが切れているから北朝鮮式迎賓館に連行されるだと?そんな話は... うわーっなにをするきさまらー」 私は話も途中にひ弱な男達に連れ去られコリアンプリズンと名のつく韻を踏んだ施設に招待された。 「メシの人ー!今日は朝食も昼食も忘れてますよー!メシの人ー!」 なんてことだろう。私はあまりの怒りのあまりわれを忘りそうになった。 むしろ忘れた。 この迎賓館に駐留させられてから、食事が出たのは最初の日の晩だけであった。もっとも初日は夜に連れてこられたので、ディナーだけでも文句は無かったが、晩飯と言えない食事係には辟易であった。 そう、その晩飯から4時間今だ朝食も昼食も果ては今夜の晩飯すらも無い。ましてや、ここには暖房器具も無く真夏の北朝鮮の寒い熱帯夜にはトテモじゃないが耐えられそうに無かった。 私はただ、冷たいツケ麺のスープが飲みたかった。ただそれだけだ。それで良いじゃないか。空腹のあまり、支離滅裂なことだけが思い浮かんだ夜であった。 更に4時間後 「ダメだ。腹減ったコンビニ行こう。」 正男は耐えかねてコンビニへ行くことにした。しかし、この迎賓館は24時間外出禁止。ここでコンビニに行けば迎賓館の規則に抵触する。常日ごろからコンプライアンスを口にする正男には重大な問題であった。 しかし、空腹はどのような理念よりも勝った。
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