脱料理人

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脱料理人

川中が料理人を辞め、仕事人の世界に転進したのは、もうかなり昔のことだ。一流の料理人として様々な栄誉を受け、更なる飛躍を約束されていたあの頃の話。 「おい、川中!なんだこの酒はこれは3点だろ。」 海腹遊山(うみはらあそびやま)は大声で怒鳴り散らした。どうやら、安い三増酒を飲みたいらしかったのだが、川中は超一級品の「あひるの里」を出したのだ。 「馬鹿な、3増酒はまがい物の酒だ。否、酒とは呼べぬ飲み物。否、飲み物とも呼べぬわ!馬鹿どもに酒を与えるな!と言うことで遊山先生。安酒は勘弁して早漏。」 川中はきわめて下手に出てそう言った。それで満足したらしい遊山は美味そうに酒を飲み干し、最後の方は酩酊して酒の味もわからないであろう状態であった。 その時川中は脱料理人をして殺し屋生活に生きることを決めたのであった。。。 「遊山先生!大丈夫ですか!」川中はわざとらしくそう叫んだ。騒ぎを聞きつけ下手物倶楽部の従業員達が駆けつけた。 「どうなされましたか!?先生!」そう聞いたのは事業に失敗し下手物倶楽部の仕入れ担当に拾ってもらった、凶極氏であった。 「川中に盛られたようだ。」遊山は息も絶え絶え、最後の言葉を吐いた。
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