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少し落ち着いたのか、うつ向いて肩を揺らすだけになった。
『ほら、目腫れるから。』
私はそう言いながら濡れタオルをゆきえに握らせた。
ゆきえはタオルを目にあてると、鼻声で『冷たくて気持ちいい』と呟いた。
『あんたくらいの年頃は、落ち着いた恋愛なんてなかなか出来ないものよ。
付き合ったかと思ったら別れて…そんなもんよ。
それに、経験を重ねていくことで自分の何処がいけなかったのかわかるでしょう?
だから、そんなに泣かないの』
私は優しく話しかけると、ゆきえはまだ少し悲しそうに笑った。
『お母さんは、こんな風にフラれたことあった?』
ゆきえがココアをすすりながら聞いた。
『そうね、たくさんあったわ…
その中でも一番思い出に残ってるのが、あんたと同じ歳にした恋だった…』
あの時は、まだ高校に入学したばかりの春だった―――…
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