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「それはお前が…。」
言いかけたところで言葉を呑んだ。
「ん?」
「いや、何でもない。」
別に可愛いことを妬ましく思ってるわけじゃない。だから言うのを止めたわけじゃない。
ただ…何だか…言えなかった。
「そっ?
それでね、いつも飴をオバサンがくれるんだよ。だから、話しを途中で止めたいけど、飴貰えるから止められないんだよね。」
ヘヘッと西野が笑う。
…それは自業自得じゃないのだろうか…?
「ふーん、良かったな。」
「うんっ!」
何だか肩を並べて一緒に歩いていると、弟がいるような気分になってくる。
西野をチラッと見ると、真っすぐ前を見て、「あ…。」と一言口にした。
その反応を疑問に思い、視線を前に向けると西野の想い人がいた。
「…あ。」
私も一言口に漏らす。
足音に気付いたのか、二階堂さんが私と西野の方を向いた。
こちらを見た瞬間、一瞬ビックリしたような顔をして、すぐ笑顔になった。
「西野くんと…確か隣りのクラスの森澤さんだ。今、帰るの?」
あれ…私の名前知ってるんだ…。目立たないから、あまり知られてないと思っていたのに。
「うん、今帰るよ。」
西野がすぐに答える。
「そっか。じゃあ気をつけて帰ってね。バイバイ。」
「うん…、バイバイ。」
まるで、ただのクラスメートの会話。
笑って言う二階堂さんに、西野は笑って返事をした。
少しだけ悲しげに…―。
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