1876人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
「はい、アドレス受信っと。後で送るから。」
アドレスを送信し終わったら、尚哉くんは携帯をパチンと閉め、笑った。
「あ、うん。そういえば尚哉くんは何で図書室に?珍しいよね。」
「今日部活が遅い時間から始まるからさー、ちょっと暇つぶしにブラブラしてたら、森澤さんが見えたからさ。」
「え?…そ、そうなんだ。」
嬉しい言葉のはずなのに、大した反応も出来ない。
顔が赤くなるのが自分でも分かった。
尚哉くんの…好きな人って、どういう人なんだろう。
「尚哉く…」
「待って。」
私の背後から聞こえた声。
これは、紛れもない西野の声。
私は咄嗟に後ろを向いた。
いつのまにこんなに近くにアイツが居たん………だ……。
振り向いて見た先には、西野と…二階堂さん。
2人の唇が一瞬だけ重なったように見えた。
急なことで、私は目を大きく見開く。
何やってんだ…?
「…………。」
何だか目の前が真っ暗で、言葉も出てこなくて……。
喉の奥で、何かがうずうずと疼いてる感覚が堪らなく不愉快だ。
西野は、私なんか見えてないみたいで、そのまま二階堂さんに二言、三言声をかけて図書室を出て行った。
二階堂さんは二階堂さんでポカーンとしているのが、私から見ても分かる。
「うわー、図書室で大胆だな。ね、森澤さん。」
「……え?
あ、そ、そうだね。」
思考停止していた私の頭の中に尚哉くんの声が聞こえ、思考をフル回転させて必死に言葉を探すけど、なかなか言葉が出てこない。
ただ、ただ、西野が出て行った方向を見つめるしか出来なかった。
最初のコメントを投稿しよう!