*+。あの子とお前。+*

14/14
前へ
/63ページ
次へ
「というのは、冗談で無料で貸してあげるからね!」 「……ありがとう」 今さっき、里沙の目が金の目になっていたが、気のせいだと思っておこう。 花火大会か…。 本当にいつ以来だろうか……懐かしいな。 小学1年生だった時、両親と妹と花火大会に行った。 小学生になって、初めて行った花火大会は、有名な花火大会だったせいか、やけに人が多くて、観光客も多かった。 幼いながらに、父と母の後を懸命について行って、フと目に入った出店。 ヨーヨー釣りの店だった。 『お母さん、あれやりたい』 ヨーヨー釣りの店を指差すと、母は美玲を抱っこしながら首を横に振った。 『駄目よ。花火が始まっちゃうし、風船に水を入れただけのものじゃない。 それで300円も取るなんて勿体ないわ。他に綿飴買ってあげるから』 そう言う母の言葉に、どうしても従う気にはなれず、私はヨーヨー釣りの前で立ち止まった。 やりたい。欲しい。 『お母さ…』 母がいるであろう場所を見ると、そこに家族の姿は無かったんだ。 はぐれてしまった…と一瞬で分かった私は、すぐさま泣いて、あちこちを歩き回った。 知らない大人ばかりで怖かった。 人混みを歩き回るのに慣れてなくて、泣いて泣いて歩き回ったことを覚えている。 そして、すごくやりたかったヨーヨー釣りを出来なかったのに、帰る時には赤いヨーヨーをぶら下げて帰ったことも覚えてる。 あれは…― 何でだったのかな…―? どういう経緯で赤いヨーヨーを持っていたのか……それがどうしても思い出せない。  
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1876人が本棚に入れています
本棚に追加