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--翌日--
結局、里沙に浴衣を貸してもらうことになり花火大会に行くことにした。
本当は少し行くのが嫌だったりする。人混みが本当に嫌いだし、クラスメイトに浴衣姿なんか見られたら吐いて失神することだろう。
「麗はもっと可愛げがあったらいいのにね」
昼休み、ファッション雑誌を見ながらポツリという里沙に、私は飲んでいるジュースをぶっかけるところだった。
「なんなんだ、急に」
溜め息混じりに聞くと、「ん~ん、あんたの性格好きなんだけど…ちょっと好きな人の前では損しそうな性格じゃない?」と小首を傾げて言われた。
「あ、ありがとう。なんかそう言われると照れるな。
…だが、気にするな。私は男なんぞに興味はないからな」
「その無駄に勇ましい喋り方も私は好きなんだけどね。
ただ、このままじゃ麗ずっと彼氏出来ないわよ?」
何故か困りがちに里沙に笑われたが…あれ?
「里沙も彼氏いないんじゃ…?」
「う、うるさいわね!!私は理想の相手に出会えていないだけ!!
見極めてんの!!ちょっとトイレ行ってくる!」
私の言葉が気に障ったのか、里沙はファッション雑誌をバシッと机に投げ捨て廊下に出て行った。
「…お、怒らせてしまったのか…?」
瞬きを繰り返し、廊下を見つめていると…アイツがいつも通りの愛想良い顔で立っていた。
友達と談笑しているみたいだが、不意に私と視線がぶつかる。
「…!!」
アイツ…もとい西野は、私と視線が合った途端更に笑みが深まり手を振ってきた。
それを見て、手を振りかえすのも何かムカつくから
視線を逸らしてやる。
アイツ、いろんな奴に愛想が良すぎるんだ。
誤解したら、どうするんだよ。馬鹿が。
そう心の中で悪態を吐きながら、アイツの居た所を再度見ると…すでに居なかった。
なんだ…、もういないのか。
フッと小さく息を吐き、俯いた。
……って、ちょっと待て。
なんで私がこんなガックリしたみたいな感じになってるんだ!?
おかしいだろう!
それに、今さっき誤解したらどうすんだ…とか思ったけど、誤解するわけないだろう!!
馬鹿か、私は!!
ふん、最近ちょっと風邪気味だからな。それのせいだろう。
夏風邪ってタチが悪いな。
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