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放課後、里沙はさっきの怒りの感情は本当に一時の感情だったのか、帰り際に「じゃあね!麗~!」と私の背中を勢いよく叩いて帰って行った。
「…さて、今日は私も早く家に帰るか」
玄関で靴を履き替えていると、背中をポンと軽く叩かれた。
里沙は、もう帰ったし…誰だ…?
顔を上げると、
「れーいちゃん!もう帰るのー?」
アイツがいた。
「…なんか用か?」
冷静に声を出すが、心の中はそこまで冷静じゃない。
先日の…アイツと二階堂さんの図書室のことが頭を過ぎる。
「えっへへ。一緒に帰ろう?」
この満面の笑み。
この屈託のない…純粋ですよ僕はって言いたそうな目。
何でだ?なんでそんな楽しそうなんだ?
好きな奴と…あんな同意の上ではないキスをしただけでこんな幸せそうなのか?
「…お前、なんでそんな楽しそうなんだ?
毎回毎回…」
何だろうか。心の底から、普段の私じゃない。冷たい感覚が押し寄せてくる。
こんなこと言いたくないのに、言うつもりもないのに…言葉が…口が勝手に動く。
「…先日図書館でお前と二階堂さんを偶然見たけど…ああいうの…見てる方は虫唾が走る」
やめろ。やめろよ…そんなこと言いたくないのに。
「…見てたんだ。……ごめんね…。
僕、蓮華しかその時見えてなくて」
そう言われた瞬間、更に苛立ちが募ってしまった。
「…二階堂さんには、好きな人がいるんだろ?」
やめろ。頼むから…それ以上は…。
「いい加減諦めたら、どうだ?
あの子もきっと…」
そう言って、西野の顔を見た。
顔を見たら、言いかけた言葉が今度は出なくなって。
私はなんてことを言ってしまったんだろう、と自分の口を覆いそうになる。
「とりあえず……帰る。じゃあな」
自分の手をグッと握り締め、西野にそう言い放ち、私は学校を飛び出した。
走って、走って、走り続けて家に帰った。
急いで自分の部屋に入って、荒い呼吸を整えようとするけど…上手く整わなくて…おかげでワケが分からない涙が溢れる始末。
アイツにあそこまで言うつもり無かった。
あんな酷いこと…っ…!
よく言えたもんだな、私は…っ…-
アイツの…西野の…
あんな…傷ついた顔…見たくなかった…。
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