*+.花火大会.+*

3/12
前へ
/63ページ
次へ
放課後、里沙はさっきの怒りの感情は本当に一時の感情だったのか、帰り際に「じゃあね!麗~!」と私の背中を勢いよく叩いて帰って行った。 「…さて、今日は私も早く家に帰るか」 玄関で靴を履き替えていると、背中をポンと軽く叩かれた。 里沙は、もう帰ったし…誰だ…? 顔を上げると、 「れーいちゃん!もう帰るのー?」 アイツがいた。 「…なんか用か?」 冷静に声を出すが、心の中はそこまで冷静じゃない。 先日の…アイツと二階堂さんの図書室のことが頭を過ぎる。 「えっへへ。一緒に帰ろう?」 この満面の笑み。 この屈託のない…純粋ですよ僕はって言いたそうな目。 何でだ?なんでそんな楽しそうなんだ? 好きな奴と…あんな同意の上ではないキスをしただけでこんな幸せそうなのか? 「…お前、なんでそんな楽しそうなんだ? 毎回毎回…」 何だろうか。心の底から、普段の私じゃない。冷たい感覚が押し寄せてくる。 こんなこと言いたくないのに、言うつもりもないのに…言葉が…口が勝手に動く。 「…先日図書館でお前と二階堂さんを偶然見たけど…ああいうの…見てる方は虫唾が走る」 やめろ。やめろよ…そんなこと言いたくないのに。 「…見てたんだ。……ごめんね…。 僕、蓮華しかその時見えてなくて」 そう言われた瞬間、更に苛立ちが募ってしまった。 「…二階堂さんには、好きな人がいるんだろ?」 やめろ。頼むから…それ以上は…。 「いい加減諦めたら、どうだ? あの子もきっと…」 そう言って、西野の顔を見た。 顔を見たら、言いかけた言葉が今度は出なくなって。 私はなんてことを言ってしまったんだろう、と自分の口を覆いそうになる。 「とりあえず……帰る。じゃあな」 自分の手をグッと握り締め、西野にそう言い放ち、私は学校を飛び出した。 走って、走って、走り続けて家に帰った。 急いで自分の部屋に入って、荒い呼吸を整えようとするけど…上手く整わなくて…おかげでワケが分からない涙が溢れる始末。 アイツにあそこまで言うつもり無かった。 あんな酷いこと…っ…! よく言えたもんだな、私は…っ…- アイツの…西野の… あんな…傷ついた顔…見たくなかった…。    
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1876人が本棚に入れています
本棚に追加