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西野を遠ざけて、悶々としたまま時間は過ぎて・・・
「麗ー!せっかくの花火大会なんだから気合い入れなさいよ!」
里沙と約束していた花火大会の日にいつの間にかなってしまい、かなり気乗りしない私は、浴衣は着たものの不愛想にワタアメを貪っていた。
「気合いってなんだ?浴衣着てきたろ?」
くっそ。歩きづらいうえにトイレもしづらい。こんなものなんでみんな好き好んで着るのか分からないな。
「だってお化粧してきてって言ったのに、全然してないじゃん!あんた、いっつもすっぴんなんだからお祭りごとの時くらい化粧してよ」
里沙は可愛らしい淡いピンクの浴衣を身にまとい、ワタアメを私から奪い取った。
「なにをする!?」
「食べ過ぎ。
さっきも焼き鳥とポテトとトロピカルジュース、かき氷にチョコバナナって食べてたじゃない。お腹壊すわよ」
そう言って私の食べかけのワタアメを食べ始めた里沙。
もっともなこと言って、自分が食べたいだけなんじゃないだろうか。
里沙をジトーッと睨みながら、里沙がよそ見をしている内に違う出店でクレープを頼んだ。
「はい。お待ち」
チョコクレープを頼み、「ありがとうございます」とそれを受け取る。
そして、また食を開始する。
「ああ!!またなんか食べてるし!お腹壊しても知らないわよ?」
溜め息混じりにそう言われたから、クレープを黙々と食べながらコクンッと頷いた。
出店を回っていると、フと目に入ったのはヨーヨー釣りのお店。
・・・懐かしいな・・。
クレープをボケーっと食べながら見ていると、「あー!麗ちゃんだー!」と可愛らしい声が聞こえる。
この声、どこかで聞いたことがあるような・・・。
「って、アイツの声・・・!!?」
気付くのが遅かった。ハッとして後ろを向くと、西野が隣りに来ていた。
「げっ」
「あ、西野くん!久し振りー!」
里沙が明るい声で西野に挨拶。
「里沙ちゃん久し振りー!2人とも、浴衣だ~!」
キャッキャッとはしゃぐ西野も浴衣だった。
コイツとは、あれ以来話してないからな・・・。なんて言っていいのか分からん。
っていうより、あんなに頑張って避けたのに・・・。
出店のせいで油断してしまった・・・。
里沙と話す西野に背中を向け、なるべく会話に取り込まれないようにしていた。
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