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西野も誰かと来たんだろう?早くそっち戻ればいいのに。
クレープを食べながら遠くを見てそんなことを思っていると、里沙が「ちょっとの間、麗のこと宜しくね!じゃあねー」と言っているのが聞こえた。
なに言ってんだ!?
慌てて振り返ると里沙の姿はなく、西野が人混みに向かって手を振っていた。
「な・・・!り、里沙はどこ行った!?」
西野と取り残されたことに気が動転して、大きな声で西野に問いかけると、奴は笑顔で私を見た。
「ちょっと買いたいものがあったみたいで買ってくるって言ってたよ。一緒に待っててだってー」
ヘラッと笑うコイツに更にイラッとしてしまう。
「いい。私ひとりで待ってるから、お前は友達のとこにでも戻れ」
「ええ~、嫌だよー」
「な!なんでだ!?」
驚いて聞くと、西野は可愛らしく首を傾げた。
「だって、はぐれちゃったんだもん。麗ちゃんも1人でいたら、いろいろと危ないよ~」
「ふん。私は大丈夫だ。カツアゲされるかもしれないという可能性を考えて、持ち金はすべて食べ物代に消えた」
西野に誇らしげに言ってみせると、クスッと笑い声が聞こえる。
それは明らかに西野の声で。
なんで笑ってるのか・・・と西野を見ると、涙を出すほど可笑しかったのか目を擦って笑っていた。
「なんだ?なにがおかしい?」
失礼な奴だな。
「ふふ。だって、僕が言ったのはそういった意味じゃなくてね」
「わ、笑うな!カツアゲ以外に何の心配がある?スリか?」
「違うよー。
麗ちゃんは女の子なんだから、ナンパされたり連れ去られたりしたら危ないでしょ?」
そう言って、私の瞳をまっすぐ見て笑う西野。その目を見た瞬間、変な感じがして、身体中が震えそうになった。
「・・・っ・・・」
「麗ちゃん?どうかした?」
こんな言葉遣いに、こんな性格の私を女の子扱いしたのはコイツが初めてだ。
その感覚が無性にかゆい。こちょばしい。
「かゆい」
「蚊に刺されたんじゃない?」
「さぁな」
フッと西野から視線を逸らし、遠くを見た。
・・・この前のこと、今謝るべきか?
でも・・・今更なんて言えば・・・。
「ヨーヨー欲しいの?」
西野の声がフッと入ってきて、「え?」と振り向けば西野は私がさっきまで見ていた方を指さしていた。
ヨーヨー釣りの出店だ。
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