*+.花火大会.+*

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「え?」 ヨーヨーのバウンドを止め、西野を見ると申し訳なさそうに首の横をさすっている。 「最近、僕のこと避けてるのかなって思って・・・。気になってたんだぁ」 そう眉を歪めて笑っている表情が、また悲しく見えて・・・胸が痛んだ。 なんで、私が悪いのに・・・自分が悪かったかのように気にするんだろう。 私が避けられてもいいくらいなのに。 傷つけたのは西野じゃなくて、私なのに。 西野にこんな思いさせてたんだと思うと、更に自分が嫌になった。 「ごめん。私が悪いから、西野は悪くないよ」 ずっと逃げてたのに簡単に言葉が出てきた。 西野のせいじゃないと伝えたくて。 「え?」 西野は心底疑問そうに首を傾げた。 あまり言いたくはないけど、言うしかないか。 「この前、ひどいこと言って悪かったな・・・。その、あれはお前があまりにも・・・」 可哀想に見えたから?不憫に見えたから? 叶わないと分かっているのに、諦めないから? そう言いかけて何て言っていいか分からなくなった。 「なぁに?」 素直に首を傾げる目の前の男にどう伝えようか戸惑う。 この口調からして、なかなかやんわりと言うことが出来ずにいた。 自分の頭の中で言葉を整理して、口を開いた。 「・・・いや、なんでもない。とりあえず、悪かった。ごめん」 申し訳なく思い、西野に頭を下げて謝ると、西野は焦った声を出す。 「え?え?そ、そんないいよ!僕、気にしてないし! それに麗ちゃんは悪くないよ!僕のこと、思って言ってくれたんだもん」 西野はいつも通りの優しい笑みを見せ、私に頭を上げるように促した。 その言葉に甘え、簡単に頭を上げると、西野の方が申し訳なさそうな困った顔をしていた。 何を言っていいか分からなくて西野を見つめていると、「僕ね、蓮華のこと好きなんだ。叶わないって分かってはいるんだけど、諦めたくないんだ」と呆れたように笑う。 「傍に居られたらいいと思うし、一緒に笑っていられたらいいと思うだけ」 西野の表情は、すごく和らいでいて朗らかだった。 風で金色の髪がさらさらと揺れる。 もう外は暗いのに、西野の髪色でまだ明るく感じる。 その姿をぼんやりと眺めていた。 西野は、きっと彼女のことを考えているのだろう。 ・・・私はあまり見たことがない。この顔は。    
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