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「僕、何言われても変われないから。だから、麗ちゃんは気にしないで。
心配してくれて嬉しかったよ」
そう言って、またみんなが見ているいつもの笑顔を浮かべた。
「ああ、そうなんだ。わかった」
これ以上、謝ったりお礼を言ったりするのは変だと思い、肯定して頷いた。
本当に好きなんだよな、私が何かを言う資格はない。
他に言葉が見つからず、赤いヨーヨーをひたすら見ていると、「ごめーん!二人ともー!待ったー?」とようやく里沙の声が聞こえた。
安堵の息を静かに漏らし、「もう戻っていいよ。あの子と一緒に花火見たいんだろ」と西野に向かって言うと、「うん!!」と嬉しそうに頷き、里沙が戻ったのと同時に去って行った。
人混みに紛れて徐々に遠くなっていく西野。
どんなに紛れても、あいつがどこにいるか分かる。金色っていうのは目立つものだな。
あいつが居なくなったら、周りの風景が一気に暗く感じた。
「ふー、ごめんごめん。遅くなっちゃったー」
呑気に笑って言う里沙を一睨みすると、「わーこわい」とワザとらしく肩を震わせる。
「遅い。いったい何してたんだ?」
イライラした口調で聞くと、里沙は「まあまあ、おかげで仲直り出来たみたいだし良かったわー」と私の背中をばしばしと叩いて笑う。
「それで許されると思ってるのか?」
こっちは神経がおかしくなりそうなくらい不安と緊張で仕方なかったというのに。
「あ、もう花火始まるよー!」
「誤魔化したな」
そう言いながらも、空を見上げると丁度花火があげられていた。
夏の夜に、盛大な歓声と華やかな音が響き渡る。
花火を見上げ、とりあえず話をすることが出来て良かった・・・と心から思った。
あえて口に出しては言わないが。
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