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「ミク!違う!」
『え…こう?』
「違う違う!何度言ったら分かるんだ!?もっと腰を入れて突け!」
『そんなこと言ったってぇ…。』
「見てろ、こうするんだ。」
ドスッ
『うっ痛そう…。』
「ミク、お前な…。その甘さを捨てろ。俺たちはそうでもしなければ身を守れないし、生きていけないんだ。」
『…。』
「クレスタの親父のように、立派な蚋になりたいんだろ?」
『…うん!』
あたしは今、イージスのおじちゃんに生きるための訓練を受けてる。
あたし達のような虫は、誰かの血を吸って、それを糧に生きてるの。
だけどそれは、大変な危険を伴うことなの。
相手も生きてるのだから、気付けば当然、攻撃してくる。
あたし達のような小さな虫は、山みたいな人間に叩かれたら一巻の終わり。
そりゃ人間に限らずとも、誰だって、血を吸われるのは嫌よね。
だからあたしは、そんなふうにいつも死と隣り合わせの生活をするのも嫌いだし、何よりも他人に迷惑かけて生きることが嫌い!!
…だった。
けど、お父さんは違った。
確かにお父さんも、吸血は生きるために使ってたけど、なにより仲間と、住みかと、そしてあたし達を守るために使ってた。
蚋は、小さくて、どうしようもなく役に立たない虫かもしれない。
だけどあたしは、蚋に生まれたことに誇りに思う。
お父さん、天国で見ててね。
あたし、立派な蚋になる!
『えいっ!!』
ドスッ
「おっ♪」
イージスのおじちゃんが、驚いて目を丸くした。
「そうだ。それでいい。」
『えへへ。』
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