第1話 家族の絆

2/6
前へ
/120ページ
次へ
「ミク!違う!」 『え…こう?』 「違う違う!何度言ったら分かるんだ!?もっと腰を入れて突け!」 『そんなこと言ったってぇ…。』 「見てろ、こうするんだ。」 ドスッ 『うっ痛そう…。』 「ミク、お前な…。その甘さを捨てろ。俺たちはそうでもしなければ身を守れないし、生きていけないんだ。」 『…。』 「クレスタの親父のように、立派な蚋になりたいんだろ?」 『…うん!』 あたしは今、イージスのおじちゃんに生きるための訓練を受けてる。 あたし達のような虫は、誰かの血を吸って、それを糧に生きてるの。 だけどそれは、大変な危険を伴うことなの。 相手も生きてるのだから、気付けば当然、攻撃してくる。 あたし達のような小さな虫は、山みたいな人間に叩かれたら一巻の終わり。 そりゃ人間に限らずとも、誰だって、血を吸われるのは嫌よね。 だからあたしは、そんなふうにいつも死と隣り合わせの生活をするのも嫌いだし、何よりも他人に迷惑かけて生きることが嫌い!! …だった。 けど、お父さんは違った。 確かにお父さんも、吸血は生きるために使ってたけど、なにより仲間と、住みかと、そしてあたし達を守るために使ってた。 蚋は、小さくて、どうしようもなく役に立たない虫かもしれない。 だけどあたしは、蚋に生まれたことに誇りに思う。 お父さん、天国で見ててね。 あたし、立派な蚋になる! 『えいっ!!』 ドスッ 「おっ♪」 イージスのおじちゃんが、驚いて目を丸くした。 「そうだ。それでいい。」 『えへへ。』
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加