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彼は普通の家庭に産まれ、そのまま普通のペットとして過ごしていくはずだった。兄弟達と無邪気に遊び、眠くなったら眠り、お腹がへったら何かを食べる。小さな世界しか知らない彼にとっては当たり前のことであった。
彼は他の兄弟よりも活発で運動能力も良く、エサの取り合いで一度も負けたことはなかった。それが彼を非日常的な生活へと追いやることになるとは思いもしなかった。
月日は流れ彼等は大きくなり里親探しをしている時に一人の老人が家を訪ねてきた。
見た目と違いその白髪の老人はまるで若者が変装しているかのように機敏に歩いた。
家に入るなり犬を見せてくれとその老人は言った。他の兄弟達が無防備に近づく中、彼だけはその老人に近づくのをためらった。彼は人見知りすることはなかったが、その老人の持つ何か得体の知れない気配を感じていたのだ。
その老人は彼に気付き、
「こいつをもらうとするか。」
「やはり猟犬ですか?」
「猟師が飼うのは猟犬に決まっとる!」
飼い主の言葉をさげすむかのように老人は言い放った。これより彼は老人と過ごすこととなった。
最初に老人から与えられたのはジローという彼の名前だった。
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