ー第二章ー

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克幸は少し離れた所で綺麗に着地し、同時に鼠はその勢いのまま地響きと共に仰向けに倒れ込み、そこから横に転がって元の体制に戻った。 「……」 その時克幸は、一瞬鼠の腹に目がいき、先程の切り傷が少しだけ大きく開いているのが見えた。 そんな中、 「血ヲクレぇ…血ヲクレぇ…」 克幸の周りにはまだまだ無数の住人がおり、皆一斉に克幸に手を翳してそう唸るように言っている。 遂に克幸に手の届く範囲にまでやって来た住人は、鈍い動きで腕を大きく振るって克幸に殴り掛かろうとするが、 「ァオオォォォ!」 克幸は両腕を前後に翳しながら全身を大きく回転させ、四方を囲んでいた住人は一気に上半身が吹き飛び、残った下半身だけがその場に倒れる。 しかし、回転の勢いが死んだ直後の克幸に向かい、 「ブオォオオォォォォォ!!」 「…!!」 鼠がまた勢いよく頭から突っ込んできた。 隙を突かれた克幸はそれをかわし切れずにまた直撃を受け、背後に大きく吹き飛ばされる。 そしてその場に倒れ込む克幸に向かい、鼠はゆっくりと歩み寄り、克幸を丸呑みにして喰らおうと大口を開いた。 次の瞬間、 「ブオォオオォォォ…!」 突然、鼠の口は縦に割れた。
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