ー第二章ー

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克幸はまたその場から数m近く後ろに転がり、自分を見下す爪牙の冷たい目に恐れを抱き、同時に自身の命の危機すら感じ、右手の親指を噛み切り、再び人狼になろうとするが、 「…!!」 何故か、人間の姿のまま変われなかった。 克幸がそれに戸惑っていると、 「…"成功作"と呼ばれる貴方達は、手を加えられた際に身体に負担が掛かり過ぎ無いよう、"アノ姿"になれる時間を制限されているの」 克幸の背後に、突然涼香が姿を現した。 「涼香…、お前もまだ生きてたのか……」 そんな涼香に、爪牙は克幸の時と同じく冷たい視線を向ける。 しかし涼香はそんな爪牙を無視し、再度克幸に説明を続ける。 「…例えば三十秒間アノ姿でいた場合、それの約三倍の九十秒間、再びアノ姿にはなる事が出来ない」 「……!」 つまり、ついさっきまでおよそ五分間人狼の姿になっていた克幸は、少なくともあと十五分間は再びアノ姿になる事は出来ないらしい。 「お前はいいよな…」 そんな克幸に向かい、爪牙は再び素早く踏み込み、大きく右脚を振り上げて克幸の首元に蹴り掛かろうとするが、 「…!!」 「………」 克幸は自力で爪牙の脚を、交差させた両腕で受け止める。 それに対し爪牙は軽く舌打ちをし、再度刀の柄に手を置いた。
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