ー第二章ー

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爪牙はそこで激しく息を荒げながら額を抑え、やや前屈みの体制から再度克幸を睨み付ける。 その爪牙の姿は、克幸とは違って身体の大きさは元と殆んど変わらず、やはりモデルが昆虫というだけあって爪も牙も弱々しく見える。 克幸がそれに油断していると、 「お前はいいよな…」 「…!!」 爪牙はいつの間にか、克幸のすぐ目前で低く跳躍し、両足で蹴り掛かろうとしていた。 克幸は咄嗟の事で反応が間に合わず、またその場から大きく蹴り飛ばされてしまう。 しかもその威力は、先程までとは比べ物にならない程強化している。 「お前と違って…俺には爪も牙も無ェ…、お前はいいよな…」 克幸は建物の壁に激突し、その建物は一瞬にして崩れ落ち、克幸はその瓦礫の下敷きになり、暫く立ち上がれない。 そんな克幸にトドメを刺そうと、爪牙はゆっくりと克幸に歩み寄ろうとすると、 「あの子は記憶を失ってるの…」 「…何?」 涼香のその一言に、爪牙はピタッと立ち止まる。 そして涼香は更に続ける。 「だから、もう少しだけ待ってあげてくれない? せめて、自分の力の使い方くらい思い出せるまでは…」 それを聞き終えた後に爪牙はフッと涼香の方に顔を向け、 「もうカタストロフィはとっくに始まってる。例え俺がここで見逃したところで、既に手遅れだと思うがな…」 そう皮肉を零しながら、同時に一瞬光が包み込んで人間の姿に戻り、 「だがまぁいい、好きにしろ…」 最後にそう言い残すと、何処かへと向かって歩き出して行った。
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