ー第三章ー

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爪牙がその場から去ってから、時はもう数時間と過ぎていた。 「…………」 瓦礫の山に埋もれる克幸は酷く痛め付けられ、中々立ち上がれない。 そんな克幸を、涼香はまた塀の上に足を組みながら座り、気長に待っていた。 「克幸…、まだ起きれない?」 「…うぅ…」 涼香のその一言に、克幸は漸くゆっくりと立ち上がる。 涼香はそれを確認するとゆっくりと克幸に近寄り、今このエリアX内で起こってる現状を説明し始めた。 エリアX内で著しいカタストロフィが確認された時、国からある発令がされた。 『生き残りを賭け、殺し合え』 国はエリアX内に存命する成功作や住人達全てに、遥か上空からヘリを使ってそう呼び掛けた。 制限時間は七日とし、その間生き延びた者は国に保護され、エリアXの外に出る事を許される。 エリアX内の存命者の殆んどは、その発令を『ゲーム』と思って楽しみ、 『kurenai blood』 という愛称で呼んでいた。 これまでが、克幸が記憶を無くして目を覚ました前日までの話。 「何なんだよソレ? 国は中の奴らの事をどうする気なんだよ?!」 「………」 克幸はそう疑問をぶつけ涼香は一瞬黙り込むが、 「私の推測では、厄介な力を持った成功作や、救いようの無い住人を全滅させる事が、おそらくは国の目的…」 「…!!」 目線を反らし、そう答えた。
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