ー第三章ー

11/14
前へ
/301ページ
次へ
そして次の瞬間、 「ひゃっはっはっはっ!」 「…!!」 滝弥は、凄まじい勢いで次朗に向かい、急降下してきた。 次朗は咄嗟に両腕を交差して翳して滝弥の嘴を受け止めるが、勢いは止まらず、背後にあった柵に叩き付けられる。 「どうしたんだ次朗! もうさっきの虎になれるんじゃ…」 すぐ隣にいた克幸はバッと振り返り、滝弥が再び空中に舞い戻ったのを見計らい、次朗の元に近寄って訪ねた。 しかし次朗は口元から零れた血を手の甲で拭いながら、 「くっ…まだダメなんだ。 オレのあの力は不完全でな、一回にあの姿でいられるのは最高十一秒が限界。しかも一度なると最低一時間はその姿にはなれない…」 「…!」 眉間にシワを寄せながらそう返す。 それを聞いた途端克幸も一瞬顔をしかめるが、その隙にまた、 「ひゃっはっはっはっ!!」 「…!!」 滝弥がまた、今度は克幸に向かって勢いよく急降下してきた。 克幸はそれに反応してすぐに右手の親指を噛み切ろうとするが、 「させねェよ!」 「…!」 克幸が親指を口に近付けるより速く、滝弥の嘴は克幸の右腕を捕らえ、克幸はそのまま遥か上空へと連れていかれた。 「ぐぁ…!」 「ひゃっはっはっはっ! こっから落ちりゃ、まず命は無ェな」 克幸はそれで絶望感に苛まれるが、その時また、脳裏に映像が映った。
/301ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1274人が本棚に入れています
本棚に追加