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理事長室のドアをノックすると、部屋の中から入室を許可する低い声が聞こえた。
「失礼します」
一礼して中に入ると、まず視界にふわふわの絨毯が目に入った。
踏み心地はいいが、これから夏を迎えようという時期に、これはいただけない。
「待ってたよ。翼君」
「……伯父さん」
革張りのソファーに深く腰を掛けていたのは、父の兄である伯父だった。
均整の取れた体つきの伯父は、ブランドのスーツをソツなく着こなしていた。
年は40を過ぎているのに、端整な顔立ちは昔と変わらない。
父さんも美形だとは思うが、伯父のような男らしさはない。
俺がいうのもなんだけど、あんまり似てない兄弟だ。
「翼君は本当に雅樹に似てきたよ」
近づいてきた伯父に、顎に手を掛けられ、上を向かせられる。
長身の伯父を見上げるのは、正直疲れる。
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