其の一 小野篁、身は朝廷に仕え、魂は冥途に通ぜり

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 肌の色白く、眉目秀麗なるも、無口でめったに笑うことはなかった。  必要なことを必要な量だけ口にする。他人が自分のことをどう評価しているかということに──というよりも、この世の俗世のことに、興味などないように周囲からは見えた。  承和十三年秋、太政官の左中弁となったが、いきがかり上になっていきがかり上その職務を果たしている。──と、まわりの人間からはその眼に映った。  しかし、仕事にはそつがない。  悪いのはつきあいだけであった。
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