一 一城直真は困惑する

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      「私はね、ナオマくんのことぜーんぶ知ってるよ」       俺にとって、恋愛が何だったかと聞かれても返答に困るだけだ。「うっせぇ」とだけ吐き捨てて、逃げるかもしれない。恋愛というものはこういうものだ、とかそういった持論なんか持ち合わせていないし、語る程の恋愛遍歴もない。ってか、そもそも恥ずかしいだろそんなこと。高校生の男が恋愛についてどうこう喋るだなんて。そうはいっても恋愛したくないというわけじゃない。仮にも俺だってごくごく一般的なオトコノコだ、彼女が欲しいし、キスだってしたい、イチャイチャしたい。けど、その後半の行為の為だけに彼女が欲しいわけじゃないし、そのために彼女を作るのは間違ってるはずだ。だから、好きな人こそ彼女にしたい。そうじゃなければ好きな人ができた時に、『彼女との行為』のためだけに付き合った女の子に「イチャイチャしたいだけでしたっ、すんません!」となるだろ。       「……あは。なぁにその顔。ん――だってさ、ナオマくんってばずっと私のこと見ていたでしょう?」        だから俺は好きな人ができるまで、彼女だとかそういう存在は考えてなかった。いや、そりゃあもう周りの恋愛ごとは羨ましかったですって。 誰と誰が付き合い始めただとか、そういう話を聞いていつかは俺も! と強く決意したりだとかしましたとも。でも、中学校のときには心がぐらんぐらん揺れるような女の子との出会いも、イベントもなかった。あったのは、幼なじみ二人との楽しい毎日だけ。それも十分に青春の香りを放っていたけど、恋愛関係のコトは一切なかった。恋愛関係イベント大量発生のバレンタインも、幼なじみと母親だけ。クリスマスも幼なじみ二人と過ごした。
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