移り行く季節の中で

11/20
前へ
/31ページ
次へ
…て、今の問題は其処じゃない。 「ねぇ、それって…──」 キーンコーンカーンコーン…… 僕の言葉を遮って、何とも平和な音でチャイムが鳴った。 「あ、ヤベ。授業始まるんで、俺はそろそろ戻ります」 「え。ちょ、皐月!!」 全くヤバいという顔をせず、寧ろ涼しい顔をしながら教室を出ていこうとする皐月。 僕は勢い余ってガタッと音を立てながら椅子から立ち上がり、彼を呼び止めた。 「頑張って下さい。相談なら俺で良ければ何時でも聞きます。ただし、ノロケ話だけは勘弁して下さいね」 相変わらずニコリともせずに振り向いてそれだけ言うと、皐月は教室から出て行った。 ……先刻、僕に軽~い意地悪をした彼には、近い内にきっと仕返しをしてあげよう。 皐月が相手なら、まず抵抗、もしくは反撃してくるだろうから、結構楽しめそうだ。 (……楽しみだなぁ…) 僕はほんの少しだけ黒いこの計画を、いつか実行に移そうと心に決め、ニヤリと笑う。 「う、宇佐見…!?」 教室に入ってきた先生が、まるで黒いオーラを出している僕に怯えているかのように、声を震わせながら話し掛けてきた。 「あ、先生。僕、眠いんで今から寝ます。安眠妨害なんてしないで下さいね?」 にっこりと笑顔を向けた僕に、先生は顔を青くしてコクコクと頷いた。 僕はとりあえず机に伏せて、給食になるまでのあと2時間の授業を寝て過ごすことにした。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加