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…て、今の問題は其処じゃない。
「ねぇ、それって…──」
キーンコーンカーンコーン……
僕の言葉を遮って、何とも平和な音でチャイムが鳴った。
「あ、ヤベ。授業始まるんで、俺はそろそろ戻ります」
「え。ちょ、皐月!!」
全くヤバいという顔をせず、寧ろ涼しい顔をしながら教室を出ていこうとする皐月。
僕は勢い余ってガタッと音を立てながら椅子から立ち上がり、彼を呼び止めた。
「頑張って下さい。相談なら俺で良ければ何時でも聞きます。ただし、ノロケ話だけは勘弁して下さいね」
相変わらずニコリともせずに振り向いてそれだけ言うと、皐月は教室から出て行った。
……先刻、僕に軽~い意地悪をした彼には、近い内にきっと仕返しをしてあげよう。
皐月が相手なら、まず抵抗、もしくは反撃してくるだろうから、結構楽しめそうだ。
(……楽しみだなぁ…)
僕はほんの少しだけ黒いこの計画を、いつか実行に移そうと心に決め、ニヤリと笑う。
「う、宇佐見…!?」
教室に入ってきた先生が、まるで黒いオーラを出している僕に怯えているかのように、声を震わせながら話し掛けてきた。
「あ、先生。僕、眠いんで今から寝ます。安眠妨害なんてしないで下さいね?」
にっこりと笑顔を向けた僕に、先生は顔を青くしてコクコクと頷いた。
僕はとりあえず机に伏せて、給食になるまでのあと2時間の授業を寝て過ごすことにした。
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