移り行く季節の中で

12/20
前へ
/31ページ
次へ
  「卯月さん、面会ですよ」 「んん……あと5分……」 「給食いらないんですか?」 「給食っ!?」 「っ!?」 頭に鈍い衝撃が走って、情けなく寝惚けた目を擦る。 目の前には相も変わらずのポーカーフェイスで、少し赤くなっている顎を撫でている皐月。 だがその瞳には、ありありと怒りの色が宿っている。 「あ、ごめん……」 「……面会ですよ。相沢葉月さんだそうです」 「え…葉月!?」 ガタッと、また派手に音を立てて立ち上がる。 今度こそ椅子が倒れて、周りの幾つかの机やら椅子やらも倒れた……って、我ながら勢いつけすぎ。 「何だよ、兎。彼女か?」 「煩いな!!机、壊されたいの!?」 「それは困るっ!!てか倒した机と椅子戻してけっ!!」 「そんな余裕ないっ」 クラスメイトにからかわれつつ、ドアのところまで急ぎ足で向かって行く途中にふと後ろを見ると、皐月が机と椅子を元に戻してくれていた。 そういう冷静さは流石だと思う。 そんなことを思っている内に、僕はドアの前についた。 これ以上、野次馬精神丸出しの奴らにからかわれると面倒だから、葉月の背中を押して屋上に移動する。 葉月は不思議そうにしているけれど、僕の頭は軽く混乱しているため、説明してあげられなかった。 ……まぁ、説明したくないってのも、ちょっとあったんだけど。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加