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「ね、君さ……変わってるよね」
(僕に関わってくるなんて)
僕は、母がフランス人のハーフ、父が日本人という、フランス人のクォーターだ。
自分で言うのもなんだけど、見た目だけは綺麗だから、僕を一目見ただけで関わってくる子はいる。
でも、喧嘩してる場面を見れば、みんな逃げ出す。
なのに。
この子が見た僕は、喧嘩をしている僕だったのに。
「え、そうですか?初めて言われました」
「だろうね」
こういう豪邸に住んでいる人間に媚を売る奴はいても、けなす言葉を吐く奴なんて、そういない。
(いや、別にさっきのはけなした訳じゃないけど)
何だか、さっきから言い訳のようなことしか思いつかない。
(…いや、言い訳じゃなくて事実なんだけど…)
ほら、また言い訳。
(…だって、心の何処かで、これ以上葉月に悪い印象を持たれたくないって、思ってる)
素直に認めるのは、癪だけど。
でも、実際にこの気持ちは存在してる。
(あー……ヤバい。やっぱ今日の僕、おかしい…)
「あの…もしかして、痛いですか?」
「え?……あぁ」
葉月が巻いてくれた包帯を見つめて、黙っていた僕に不安になったのか、葉月が不思議そうに顔を覗き込んでくる。
その表情が可愛くて、頬が少し熱くなるのを感じる。
「…ちょっと考え事してただけ。痛くないよ」
自分の中の矛盾に混乱していて、何かのネジが飛んだのか、自然な笑顔が出た。
「良かった…」
(…ホントに、不思議な子だな)
ホッとしたように笑う葉月を見ながら、僕はもう一度、同じことを思った。
初めて会った、しかも自分が震えるほどの喧嘩をしていた僕に、どうしてここまでしてくれるのかは判らない。
(けど……)
「手当てしてくれて、ありがと」
何となく、訊くのが怖くなって、僕はそれだけしか言えなかった。
どうして怖くなったのかを考える前に、情けないって感情が出てきてしまって。
うやむやになったせいで、その時の僕には判らなかった。
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