移り行く季節の中で

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昨日はあの後、どうしてもと言う文月と、時間があるなら是非と言う葉月。 二人の勢いに押されて、相沢邸で夕食を食べた後、リムジンで家まで送ってもらった。 「はぁ……」 頭から、葉月が離れない。 (よく考えてみれば初めて会ったような気がしないし、おまけに葉月のことを思い出す度に動悸が……) 「どうかしたんですか」 「……え?」 突然の声に、思考が現実へと戻って行く。 目の前には、僕の顔を覗き込んでいる誰か。 近すぎて焦点が合わず、目を凝らしてよく見つめる。 「うわっ!?」 「は?」 僕の顔を覗き込んでいたのは皐月だった。 僕は少し驚いて退け反ってしまい椅子から落ちそうになったけど、皐月は余裕で呆れたような顔をしていた。 「……恋煩いですか」 「なわけないじゃん……何考えてんのさ?」 「いえ、別に何も」 皐月はクールだしポーカーフェイスだ。 小4の春、学校からの帰り道。 大勢に囲まれて、たった一人で、余裕な表情と動きで喧嘩をしてる男子生徒を見て、理由もなくソイツに加勢した。 それが皐月だった。 それ以来、皐月とは妙に気の合う友達……というより仲間として、違う学年だけどよく僕のクラスに遊びに来る。 今僕は5年で皐月は3年だから、一年以上この兄弟のような関係が続いている。
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