誤算

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途端に、今までの騒ぎが嘘だったかのようにシンと静まり返った。 斗志は未だにその場から動くことが出来ずにいた。 「終わった…?」 一人、そうぽつりと呟く。 「終わったんだ…」 それは徐々に確信へと変わっていった。 そう…ついに、この長かった遊びが終わったのだ。 そう思うと、一気に肩の力が抜けてきた。 …いや、安心するのはまだ早い。 怪我人が出ているのだ。 早くここから脱出して、怪我人を病院に連れて行かなければ。 斗志は床についた手に力を入れた。 …そうだ、千秋。 そういえばさっき、勇二さんは千秋が怪我をしたと言っていた。 まさか、動けない程に酷い怪我なのか? それなら、本当に早く連れて行ってやらないと… しかし、 「あれ?」 立ち上がろうとして、急にふらりとよろめいた。 少し浮かせた腰が、またすぐに床へと下ろされる。 なんで? 不思議に思いながらも、斗志は自分の背中へと目を向けた。 すると、未だにナイフの柄が生えている自分の背中。 そこを中心に、何やらシャツが真っ赤に染まっているのに気が付いた。 恐る恐る触ってみる。 すると、ぐっしょりとした感覚で掌が血で真っ赤に染められた。 血… その光景に、すぅっと意識が遠退いていく感覚に襲われる。 頭の中では、早くみんなを助けなければ…という想いが強くあるのに。 体の力は、意に反してどんどん抜けていった。 そして… ドサッ 斗志は蕨の隣に並ぶように、前のめりに床に崩れ落ちた。 遠退いていく意識の中。 誰かに呼ばれた気もしたが、返事をする間もなく瞼はどんどん重くなるばかり。 そしてついに、斗志の意識はそこで途切れた。 .
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