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「ねぇ、メアリー・ケイって知ってる?」
「メアリー・ケイ?誰それ?」
市立・山田高校。
部活動が義務付けられているこの高校は、毎日賑やかな放課後を迎える。
しかしそんな中、静かに活動中の部活動が一つ。
隅の空き教室の引き戸に、手書きで書かれた部活動名。
“ミステリー研究会”
数少ない文化系の一つだ。
「人の名前じゃないのよ。遊びなんだって」
「遊び?」
机の上に身を乗り出し、蕨野 美樹(ワラビノ ミキ)は頷いた。
一つに結んだ長い髪が、窓から入る風で静かに揺れる。
「ふぅん、どんな?」
彼女の言葉に、加世田 斗志(カセダ トシ)は興味深そうに顔を上げた。
暑いのか、少し長い襟足を持ち上げ、うざったそうに首元をウチワで仰いでいる。
真夏日のこの日。
室内の温度計は、30℃を示していた。
「あのね、まず鬼を一人決めて、他の人は一斉に隠れるの。そして皆が隠れ終わったら、鬼がそれを探しに…」
「…蕨。それ、ただのかくれんぼじゃん」
途中で遮り低音でそうツッコんだのは、小林 千秋(コバヤシ チアキ)。
夏服の袖を肩までめくり上げ、斗志同様暑そうにウチワで顔を仰いでいる。
千秋は読んでいた本から目を離して豪快な欠伸をすると、「暑ちぃー」とボサボサの頭を乱暴に掻いた。
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