脱出

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あれ?俺…生きてる? 「蕨…俺、どうして…」 館で自分の血を見てからの記憶がない。 あのあと…どうなったんだ? 蕨が混乱する斗志を落ち着かせるように、ゆっくりとした口調で答えてくれた。 「斗志くんがメアリー・ケイを終わらせてくれてからね。館の扉を確認してみたら、ちゃんと鍵が開いていたの。電話も通じるようになってた。だから私と勇二さんで怪我人を運んで、急いで救急車を呼んだの」 「そう…」 ようやく思考回路が働き出したのか、すぐにその説明を飲み込むことが出来た。 「そっか…ありがとう。よかった、無事だったんだね。蕨も、勇二さんも」 そう言って笑んだが、蕨は何故か悲しそうな表情で視線を落とし首を小さく横に振った。 「ごめん。私が…斗志くんにこんな大怪我をさせちゃったんだよね。ごめんね…本当にごめなさい」 そう言った彼女の手は小刻みに震えていた。 よく見れば、服装も変わらず制服のままだ。 外の景色から察するに、多分あれから丸一日近くが経っているだろうに。 きっと、ずっと心配して側にいてくれたのだろう。 「なんで蕨が謝るんだよ。この怪我はメアリー・ケイがやったんだ。蕨じゃないよ。俺の方こそ心配かけてごめん」 そう言うと、彼女は緊張の糸が切れたように急にポロポロと涙を零し始めた。 「お、おい。泣くなよ蕨…」 斗志は反応に困り、おどおどと手を伸ばす。 しかしその手の行き場に更に困り、どうしようかと迷っていたその時――… ガラッ 「お!」 そんな声と共に、誰かがタイミングよく扉を開けて部屋に入ってきた。 視線を向ければその男…佐々木勇二と目が合う。 彼は「よっ」と軽く手を上げて、ベッドの傍らの椅子に腰を下ろした。 「勇二さん!」 その元気そうな姿に安堵の息を吐く。 斗志はそこでようやく実感した。 俺たち、本当に助かったんだ… .
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