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「目ぇ覚めたのか。よかった。傷、大丈夫か?」
勇二が言った。
「今は何も。傷口がどうなってるかなんて見たくもないですけどね」
そう言って笑うと、彼も眉を下げて少しだけ笑った。
「悪いな…お前らにばっか怪我さしちまった」
「何言ってるんですか。勇二さんたちが居なかったら、きっと俺助かってなかったですから」
そう自分で言って、ふと気付く。
そうだ…そういえばあの時、千秋も怪我を…
そうだ、千秋は!?
「勇二さん、千秋は!?」
突然血相を変えて聞いたからか、勇二は少し驚いた顔をした。
続けて興奮しきっている斗志を「まぁ落ち着けよ」と手で制す。
そして、
「大丈夫、あいつも無事だ」
そう教えてくれた。
無事…
「ホントに…?」
「あぁ、今も様子を見てきたところだ。まだ目は覚めてないが、命は取り留めた。もうじき起きるだろ」
「そっか、よかった…」
はあぁ…と息をつく斗志。
よかった…本当によかった。なんだよ、無事だったのかよ…
そこで、新たな疑問が頭に浮かぶ。
「じゃぁ、他に…助かった人は…?」
恐る恐るそう聞くと、2人は一度目を合わせてから気まずそうに視線を落とした。
俺たち以外に…あと何人助かった?
不安が過ぎる暫しの間。
その沈黙を破り、ようやく勇二が口を開いた。
「俺たちが確認しただけでは、他は多田野高校の上村幸一ただ1人。他のメンバーは今捜索してもらってるが、多分生存の確率は…」
勇二は最後をそう濁したが、聞かずともそれに繋がる言葉は安易に予想出来た。
生存の確率は…ほとんど0に近い。
覚悟はしていたものの、あまりに予想を超える犠牲者の数に驚きを隠せなかった。
助かったの…たったの5人だけかよ…
その現実が、ズシッと重く体にのしかかってきた。
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