脱出

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あれ? 斗志はそこでハタと気付く。 「じゃぁ…幸枝さん…も?」 そう言うと、勇二は小さく首を横に振った。 「分からない。俺もあのあと館内を捜してみたんだが、どこにも見付からなかった…」 一つ間を空け、続ける。 「それに上村幸一のことだが、どうやらあいつはメアリー・ケイじゃなかったらしいな。あの後あいつ、狂ったように暴れ回ってよ…結局警察に連行されてった。今は奴がどこに居るのか知らないが…」 そこで一旦言葉を区切った勇二は、自分のこめかみ辺りに人差し指を当て、 「かなりキてたらしい」 そう言った。 斗志は自分に銃を向けた彼の姿を思い出す。 「そう…ですか」 そう呟き、目を閉じた。 上村に命を奪われたメンバーも少なからず居るだろう、と勇二は言った。 斗志はそれにショックは受けたものの、不思議と怒りは湧いて来なかった。 確かに、取り憑かれてもいないのに人殺しをした彼の行動は異常だ。 だが、彼をそこまで追い詰めたのは、確実にメアリー・ケイという遊びの内容。 ある意味彼も、犠牲者の内の1人なのだ。 3人は一時の間、言葉を無くして沈黙した。 幸枝さん… 結局彼女の不可解な行動の数々は最後までよく分からなかった。 でも何となく、彼女ならまだ生きているような、そんな気がした。 大丈夫、きっと無事に戻ってくる… そんなことを考えながら、斗志は自分の掌を目の前に翳(かざ)してみた。 生きてるんだ… そう思った。 一時は死をも覚悟した。 だからまたこっちの世界にいる自分が、何故か不思議な感じがしてならなかった。 .
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