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「あのね…幸枝さん、2年前まで恋人がいたんだって。同じ高校で同じ部活で。本当に大好きだったって、幸枝さん言ってた。
でもね、2年前。メアリー・ケイを実行したメンバーの中に彼もいた。そう…彼は亡くなったの、その時に。すごく悲しかったって幸枝さん言ってた。そんな時に気付いたんだって。
彼から貰ったネックレスが、いつの間にか無くなってることに。
常に肌身離さず首にかけていたはずのネックレスが、メアリー・ケイが終わった時にはもう…どこにも。
何度も探しに行こうと館に出向いたけれど、不思議なことに館には常に鍵が掛かっていて入れなかった。15人で来た時には何事もなく開いたのに、よ?
だから思った。きっと、15人で来た時にしか開かないのだと。だから、もう一度メアリー・ケイを実行することを計画した。
警察には居もしない殺人犯をでっちあげた。メアリー・ケイのことを調べられたら、もう二度と実行することは出来なくなると思ったから。
彼女、だからあの時1人で出て行ったの。危ないって引き止めたけど、止めないでって言われた。私、その顔を見たらもう止められなかった…
幸枝さんはずっと、自分が2年前に動いたルートを辿りながら、ネックレスを探し続けていたの」
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「ネックレス…ってなぁ」
千秋が呆れたようにそう口にした。
「他人を巻き込んでまで…ましてや自分の命を危険に晒してまで、取り戻す必要があったのかよ…」
きっと、犠牲者たちの事を思いながら言っているのだろう。
斗志自身、そこにはやはりやり切れない思いを抱えていた。
果たしてそれが、命よりも大事なものだったのか…
だがそれは、直接彼女に聞かずとも明らかなことだった。
「きっと、彼女には自分の命よりも…他の何よりも大切な物だったんだよ」
斗志は一人、幸枝のこの2年間のことを考えてみた。
メンバー集めのためにサイトを立ち上げ、実行の機会を待つ日々。
きっと事件のことを忘れた日なんて、1日だってなかっただろう。
全ては恋人からの形見を取り戻すために…
そう思うと、少し胸が痛んだ。
今回のことは、悲劇が悲劇を生んだ結果となってしまったらしい。
結局彼女は、それ程までに待ち望んだネックレスを見付けられたのだろうか。
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