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世の中不思議の事だらけだと、今の僕は思っている。
昔の僕、といっても五年前の中学二年生の僕は、不思議な事なんか無いとか思ってた。それまでも。……まあ、五年の間に色々あって今は真逆の考えに変わった。
――だけど、こんな事は不思議いっぱいの五年間でも無かった。
朝。いつも通りの時間に起きた僕は、そこで初めて今日が休みなのだと気付いた。自分の事ながら、なんとも間抜けなんだか。そのせいか知らないが、昨日の夜から開け放っていた窓から入る風がいつも以上に冷たかった気がした。
とりあえず、起きてしまったのはしょうがない。洗顔や歯磨き等々をするために僕は部屋を出た。
扉を開くと、真っ直ぐ二メートル程の廊下。真ん中辺りの右にクローゼット。左に弟の部屋へと繋がる扉。突き当たりに両親の寝室へと繋がる扉。そして、視界の右下に顔を覗かせている階段。
弟の部屋にも両親の寝室にも用はない。フローリングの冷たさを感じながら階段を下りた。
左に弧をえがいている階段を下りると、目の前にリビングとキッチンに繋がる扉。左はトイレ。右は和室に繋がる扉。それのちょっと右奥に玄関がある。
トイレに入ろうか迷ったが、目の前の扉を開く。テレビが僕を迎え、魚の焼けた良い匂いが鼻をくすぐった。
「母さん、今日の朝ご飯は?」
「味噌汁に焼き魚、それと厚焼き卵です」
僕の問いに答えたのは母さんではなかった。
驚いて声の聞こえた方に顔を向けると、そこには女の子が居た。
一言で表すと、その人は綺麗だった。どう綺麗なんだと聞かれても僕は説明することは出来ないけど、兎に角綺麗だった。
「私の顔に何か付いてますか?」
見つめ続けている僕に彼女は首を傾げて聞いてきた。
「え。あっ、そんなことないですよ」
とりあえず、何も付いてないということは伝えた。
「そうですか。早く食べないとご飯冷めちゃいますよ」
微笑んで彼女は言った。色々と聞かないといけないことはあるが、さっきから良い匂いを放出し続けている料理に、僕のお腹の虫は限界を告げていた。
「ご馳走さま」
「お粗末さまでした」
お腹も満たされ、もとい少し食べ過ぎた感は否めないが、僕は気分が良かった。
食器を流しに運び、洗っている彼女を見て重要な事を思い出した。
彼女は一体誰なんだろうか。
洗い物途中の彼女に、僕は質問を投げかけた。
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