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「里子、おはよう。」
「みかちゃん、おはよう。」
教室の扉の前で、友達と挨拶を交わす。
今日もいい天気!
神田里子(かんださとこ)都立高校二年生。
勉強・顔・スタイルは人並み。性格…引っ込み思案。
友達は、あっちゃん・ひろちゃん・みかちゃん・ともちゃん。いつも5人で行動している。
好きな科目は国語。嫌いな科目は体育。だって、どんくさいから。
好きな人は…
「新井!」
ピクンと体が反応する。
「昨日のジャンプのさぁ…」
神経を研ぎ澄ませて、会話を聞いてしまう。
新井匡(あらいただし)バスケ部所属。次は彼が主将だろうと噂される程の腕前だ。
「里子さん?」
わざと、さん付けして私を呼ぶともちゃんこと。石澤巴(いしざわともえ)
「何?」
「告白しないの?」
「―!なん!何いきなり!」
恥ずかしくなって、どもってしまった。
「ひろ達も気付いてるよ?本人に気付かれる前に、しなさいな。」
「な!いつから…。」
恥ずかしくて、顔を隠しながら聞くと。ともちゃんは、ケロッと言い放った。
「最初から。」
ガタガタ!
私は、震える足で至る所を机や椅子の脚にぶつけながら立ち上がった。
「里子?」
周りからの視線に気付くと、パニックになって勢いよく走り出した。
「あ!里子!」
私は無我夢中で走った。
途中、転びそうになっても走った。よくぶつからなかったと思う。そして、図書室へ入った。誰も居ない。
「良かった。誰も居ない。でも、授業どうしよう…。」
「サボれば?」
「え!あ。先生…。」
目の前には、化学の佐田美弥先生が居た。
「たまに、サボる青春も必要よ?型にハマってたら、つまらん大人になるからさ。」
「はぁ…。」
その台詞に驚いて、どう答えたらいいか解らない。
「で?」
「へ?」
「サボリの理由は、男?」
「な!なん!」
顔が真っ赤になってることは、自分でも解ってた。
「あら。図星?可愛いのね。」
「からかわないでくださいよ。私だって、どうしたらいいのか…。」
「クラスメート?…みたいねぇ。」
全て顔に出てるんだろう。
先生は苦笑していた。
「ごめんね。からかい過ぎたわね。クラスメートと言えば…新井君、転校するみたいね。」
「―え?」
「昨日、担任の深法川先生と話してるの聞いたのよ。」
途中から、先生の話は耳に入らなかった。
“新井君が転校する。居なくなる…”
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