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クローバー畑で静かに仮眠をとっていたところを不意打ちされた彼は、すこぶる不機嫌だった。
「……。なんであんな所に中学生が…?」
廊下の冷たい空気に晒され、少し頭がはっきりしてきた。
窓からは裏庭の様子が伺える。
先程の中学生は庭中をうろうろとさ迷った後、おもむろに寝転んだ。
(制服のまま、朝露で濡れている草の上に横になるとは……。まるでアイツみたいだな)
中学生の奔放な姿に、ずっと探し続けている人の姿が重なってみえる。
「各務ー?」
廊下の奥から声が聞こえ、それがこの学校の教師とわかるとそちらに顔を向ける。
「はい、今行きます」
裏庭にもう一度目を移すと、中学生はすでに眠りについているようだった。
(寝るのも早い…そんな所も似ているな…)
彼はもう前を向いて歩き始めていた。
その表情には小さな笑顔を浮かべて。
「新入生代表、頑張れよ」
人の良さそうな教師の言葉に、はい、とだけ答えると、新入生が立ち並ぶ講堂へと真っすぐに歩みを進めた。
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