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泣いてる理由を聞く権利があるはずだ。
見てしまったのだから。
…正論?
本音はただ知りたいだけ。
優理花が泣くなんて思いもよらなかったから。
「ただの嬉し涙なので気にしないでください。」
「そっちの方が余計気になんだけど。」
しかも史隆が原因て。
史隆はファンは多いけど、現実に女の子にモテてるところ見たことが無い。
外見が外見だから。
フエンスに寄り掛かってしゃがみ、隣の優理花を見上げる。
バックに見える水色の空がやけに優理花に似合っていた。
で風に優理花の髪がサラサラと揺れる。
香奈の髪だったら動かないような小さな風。
固めで少し癖っ毛で。
ロングは無理なのって言っていつも切ってしまう。
ロングに憧れているくせに100かゼロ。
ヅラかボウズかって言ったら怒ったフリして笑ってた。
笑った顔。
香奈は黄色だな。
太陽…。
「屋上の鍵、何で持ってるんですか。」
「合鍵。」
「私も欲しー。」
優理花は隣に座り込み、遠くを見ながら言った。
「史隆も持ってるぞ。」
笑顔じゃない優理花はマネキンみたいだった。
「まさかお前らが付き合ってたなんて思ってなかった。」
優理花は少し笑った。
悲しそうだっだ。
「付き合ってないです。ずっと告白してて、でも、ダメで……。」
「ずっと?!」
素で驚く。
「つか何で史隆?!」
優理花は眉間に力を入れ、また涙ぐんで俺をにらんだ。
「だって大好きなんだもんっ!!」
俺の驚きが悔しかったらしく泣きながら怒った。
強烈なむき出しのパンチ。
ショックだった。
思ってた女じゃない事。
ただの女の子だ。
これじゃぁ、香奈より子供。
罪悪感が体中に循った。
「好きなのに信じてくれないっ…。」
「そりゃあね。信じられないでしょ。奇跡見てるとしか思えない。女神が豚を愛するみたいな…。動物愛護?」
「シュウ君、嫌い!」
また俺に怒る。
おもしろくて笑える。
「この前好きだって言ったくせに。」
「だって、シュウ君は外見を見てないって思ったから。」
「外見?」
「顔とか。でもだからってフミ君みたいに本質を見てくれてるワケじゃないってその時分かりました。だから嫌い。」
「あっそ。フミ君は見てくれてるワケだ。良かったね。でも見せなきゃ分かんねぇだろ。知らないものは存在しないのと一緒なの。分かる?」
「分かってます。でもね、シュウ君。シュウ君はやっぱり嫌い。」
「はいはい。すいませんね。」
少し会話が楽しいと思った。
そう思ったら香奈と話したくなった。
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