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でも当然泣かず、笑顔で一つひとつ冷静に返事をしてきた。
すごく惨めな気分だった。
「優理花はさ、笑っていれば誰も傷つけないって思ってるんだよ。よく笑ってるだろ。」
優理花の笑顔を見るたび香奈に早く会いたくなっていた。
同じ女なのに、同じ笑顔なのに、与えられるものがまったく違う。
「優理花が真顔の時見た事無いっすね。」
「だろ。でも優理花は傷つけない代わりに本心も出せない。見せ方が分からないんだな。どうやら。無難な言葉しか言えない。何か言って傷つけるのが恐いから。」
「そんな風には見えないすよ。」
「どんな風に見える。」
社長はニヤリとしながら俺にすかさず聞いた。
「余裕な大人の笑顔じゃないすか。社長何聞いたか知りませんけど騙されないで下さいよ?」
「やっぱり。お前、優理花が嫌いだろ。」
「まあ、はい。」
社長は嬉しそうに笑う。
「俺は大丈夫だよ。優理花なんて産まれる前から知ってる。」
「前世の話…?引くよ…。」
「アホかっ。妊娠中だよ。あいつの両親は俺の友人なんだよ。」
「知ってるよ。コネ入社。」
「…あいつの中身は傷つきやすい中学生の心で止まってんだよ。可愛いぞ。」
「あっそ。」
娘自慢のような展開になりそうだったため俺はその場を逃げた。別に今、優理花の話を聞いたってどうも思わない。
大切なのは香奈が居ない事にどうやって身を合わせていくか。
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