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ウチのレーベルの事務所はビルの一番上を陣取っているが、屋上は開放していない。
16階建てでもちろんエレベータがある。
つまり階段はダイエッターか自殺願望者が屋上に行く時くらいしか通らない。
静か、遠くに人の声が聞こえておもしろい。
世界から少しだけ離れた気になる。
そこに勢い良く飛び込んできたのは優理花だった。
お互い驚き、俺は優理花の表情を見てさらに声をだして驚いた。
「ゲ。」(泣いてるっ。)
優理花は戸惑い、後ろを気にして小さく‘助けてください’と言った。
「…何で俺が。」
俺が階段入り口のドアを開けようとすると同時、勢い良く史隆がドアを開けた。
俺はその勢い良いドアを慌てて押さえた。
二人共もっとドアに優しくしてやれよ。
「秋二っ。」
「ビックリ。何、鬼ごっこ?」
「だったら楽しいけどな…。…優理花見たか?」
俺より10センチ以上背が低い史隆は俺を必死の目で見上げた。
長めの髪を後ろにちょんと結んでいるが必死で走ったんだろうか、乱れまくりで眼鏡の内側にも一束入っていてキモイ。
このキモイのがウチのボーカル。
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