僕の牙

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ほんの少し人差し指に力を加える たった其れだけの事 其れすらも僕は出来ずにいる       何時からだろうか 自分自身を憎むようになったのは 何時からだろうか 強欲になったのは 何時からだろうか 自分を閉ざすようになったのは 何時からだろうか 他人と関わらなくなったのは     何時からだろうか 他人とは違う感覚に目覚めたのは     そう実感したのは高校一年生の夏 他人に興味が無くなって来た 「命」と言うものが軽く思えてきた     初めは想像するだけで良かった でも時が経つにつれ 想像ではおさまりがつかなくなってきた     おさまりがつかなくなった僕は 足元に居た虫を踏み潰した 心地の良い気持ちが僕を包む     その日からだろう 僕が狂いはじめたのは     僕は毎日のように命を潰した 虫は飽きたのか 今度は小動物を殺めた     ねずみを はとを いぬを ねこを     小動物にも飽きたのだろう 人を殺める事を考えるようになった     高校二年生の春 僕は人を殺めた 背後からナイフで一刺し 手が震え 呼吸が速く 頭の中が真っ白になる しばらく経って遺体を埋めた 其の日は何も考えられなかった     殺り遂げた達成感と ナイフを刺した時の感触に酔っていた     其れから僕は人を殺め続けた 殺めて殺めて殺め続けた     何時しか人ですら飽きてきた 人を殺める事に飽きた僕は もう終わらせようと思った     最後は僕自身 そう決めていた     銃口を頭に突き付ける 引き金に指を添える あとは引き金を絞るだけ     たった其れだけなのに 其れが出来ずにいる     幾つもの命を潰してきたのに 自分の命を潰せずにいる     後は引き金を絞るだけなのに
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