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■隆人 6幕目
僕と彼女は互いに
目を合わせたまま
一歩もその場から
動かなかった。
僕が言わねば・・
フラれてもいい。
僕が言わねば・・
運命の時は来た!
「あの・・」
声にもならない声で、
一言だけ、
『あの・・』 などと
紡ぎだす。
彼女は一瞬、優しげで
甘い笑みを僕に見せる。
「・・・・・」
こ、声が出ない・・
僕は彼女のことが
好きじゃないのか!?
否!
僕は意を決する。
神様、僕に力を下さい!
彼女に愛を伝える力を・・
僕に勇気を下さい!
「あの・・
す、す、すき・・
すきやき
食べにいきませんか!?」
あー! ぼ、僕は
何を言っているんだ!?
彼女はズッコけるのと
同時に僕を
憎しみと呪いの目で
見つめる・・
こ、怖い・・
やはり
これが彼女の本質だ・・
騙されてはいけない!
天使のような姿の裏側には
悪魔が潜んでいるのだ!
その時、彼女に
死神を垣間見ると、
彼女は その妖しく
ピンクに彩られた
誘惑の唇を開く。
「いいわよ。
すきやき?
美味しそうじゃない・・
行こっか」
何ぃ!?
これは予想外な展開だ!
く!何という奇襲作戦!
僕はあまりの
彼女の奇策ぶりに
立ち眩みがした・・
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