両雄 衝突

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■夕菜 1幕目 ふいに私の景色は回転した。 この暑さのせいだろうか? いや、違う! ぶつかった!? 何と!? 人間!? 男!? 瞬時に私の脳内に 弾き出される様々な 断片的な情報。 痛っ・・ すぐに痛みが神経を伝わり、 脳に直撃するとともに 私の脳は謝罪の命令を下す。 「ご、ごめんなさい」 私は男の顔も見ずに 頭を下げる。 手放した教科書やノートが まるで真夏の夕立のごとく バサバサと 私の目の前をかすめていく。 私は男を見上げ 様子を伺った。 とりあえずは、 怒ってはいなさそうだ・・ 男は 鳩が豆鉄砲を食らったような 顔をして 私を見つめ呆然としていた。 どうした? 彼に何が起こった? 衝突事故から約3分。 彼は以前  動く気配を見せない。 無言で私を見つめる彼に 私は 「だ、大丈夫ですか?」 などと、言ってみる。 すると、彼は ビクリと体を振るわすと 半ば強引に 口から言葉を紡ぎ出す 「ああ、大丈夫だよ・・  僕の方こそ、ごめんね」 そう言うと、彼は 私の教科書やらノートやらを 拾い集めはじめる。 私のよりも、 自分の落としたやつを 拾えばいいのに・・ 仕方なく、私は 彼の教科書とノートを 手に取る。 『藤堂 隆人』 彼の教科書には こう書かれている・・ 藤堂隆人? 私はギョっとした。 冗談よしてよ・・ あの、藤堂隆人? ピュアメイカー・隆人!? チィ! アンラッキーな出会いだ・・ 神は私に 人生第一の試練を 与えるというのか!? 『ピュアメイカー』 彼はそう呼ばれる。 その純心無垢さから 女性を魅了し、 やがては その心も身も破壊する。 本人の意思とは無関係なので 余計にタチが悪い・・ ヤバい! こんな男に 関わっては危険だ! 私の脳内細胞から ドーパミンとアドレナリンが 噴出し、一気に警戒態勢へ 始動する。 私は 音速に勝るとも劣らない 速さで散乱した 教科書やノートなどを かき集め、 立ち去ろうとした。 げっ! この教科書とノート、 こいつのじゃね!? 私の所有物は彼の手の内だ。 どうする?  どうすればいい? 話しかけなきゃ ならないのか!? このまま、彼の手から ぶんどって、走り去ろうか? いや、それはマズい。 何故なら、 彼が追いかけてきて 何かしらのリアクションを 起こす可能性があるからだ。 ふと、彼を見ると 何故か 頑なに目を閉じている。 なんだ!? 一体、何だってんだ!? くそう、何で こうなってしまったんだ!
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