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■隆人 2幕目
・・彼女はもう去ったか?
いや、その様子は無い。
彼女の
何ともいえない威圧感と
彼女の甘い香水の香りが
僕を包んでいる。
危機はまだ去ってない。
耐えろ・・耐えるんだ。
「あのぅ・・」
くぅ!なんだ!?
彼女が喋りかけてきたぞ!?
応答するべきか?
それとも、無視か?
どっちの行動がベターだ?
いやいや、迷うまでも無い。
返事をしたら最後だ。
無視をする方が正解だろう。
僕は息を殺し、
ゴクリと唾を飲み込む。
僕は石だ。僕は石になる。
その時である、
僕の脳天に
痛烈な痛みが走った。
思わず目を開け、
「な、なんだ!?」
と、叫ぶ。
「その教科書、
私のなんだけど?
返してくれないかな!?」
彼女が僕の頭を叩いたのか?
瞬時に状況を把握する。
彼女は頬っぺたを
ぷっくり膨らまし、
僕を見つめている。
か、かわいい・・な。
くー!ダメだ!
彼女の瞳を見てはいけない!
僕はとっさに彼女に
背を向け、駆け出す。
「おい、ちょっと待て!
どこいくんだ!」
どこいくんだ?って
君の居ないところだよ!
「ごめん!」
何故か僕は彼女に謝ると、
階段を駆け上る。
そして、
目前に屋上のドアが迫り、
蹴破りながら開ける。
ハァハァ・・
追っては・・こないだろ?
あれ?
そういえば彼女、
なんか言ってたな。
教科書がどうとか・・
嫌な予感が体中を突き刺し
手に持った教科書を
恐る恐る、覗く。
『加藤夕菜』
・・・マジっすか。
僕はその場にヘナヘナと
座り込んだ。
やがて、階段の下から
足音が聞こえる。
来る・・!
ハートブレイカーが来る!
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